ピッピッピッピッ……。

私が意識を取り戻して最初に聞こえてきたのは一定のリズムで聞こえてくる機械音。次に朦朧とする意識の中で感じたのは、クリーム色のカーテンで仕切られた部屋にほのかに香る消毒液の匂いとズキズキと痛む私の体の感覚だった。

ガラガラッ___

しばらく時間が経ち意識がしっかりしてきたと思っていると扉を開ける音が聞こえた。パタパタというスリッパを履いているような足音はだんだんこちらにちかづいてくる。

シャッというカーテンを開く音と同時に一人の少女がその場に立ちどまり目を丸くさせて私を見下ろしていた。

「幸来……。」

少女はそういって目を潤ませポツリと私の名前を呼ぶ

私は岩崎幸来。17歳の高校3年生。
幸せの幸と未来の来で「みらい」と読む
お母さんが幸せな未来を掴めますように。という意味を込めて名付けてくれたらしい。
そして私の名前を呼んだ少女は私の親友である菅原美琴だった。美琴は幼稚園からの仲でいわゆる幼馴染。小中高と同じ学校に通い今では私の大の親友。

「美琴…私どうして病院に…??」

イマイチ状況が把握出来ていない私は美琴に聞く。

「一緒に学校から帰ってきたの覚えてる…?」

学校…。
そうだ。今日は三者懇談で早下校で…。
確か美琴と駅前に新しく出来たカフェでパフェ食べて帰ろうってなって駅に向かって…。

「幸来ね、駅前のカフェに行く途中に信号無視の車にぶつかったの…。幸いスピードが遅かったおかげで全身打撲で済んだんだって。」

あ…。そうだ。
確か青信号になって美琴と横断歩道渡ろうとしたら凄く大きな音と一緒に周りの悲鳴が聞こえてその後すぐ全身に強い痛みが走って…。

「美琴、思い出した…。そうだ私白色の車とぶつかって…。」

交通事故には気をつけようって今まで耳にタコができるくらい沢山の人に言われてきたけど本当に他人事じゃないんだな…。

そんなことを思いながら鈍い痛みが走る体を寝ながら見つめていると美琴がポロポロと涙を流し始めた。

「え?!ちょ、美琴?!」

「ごめん幸来。私が駅前のカフェに行こうなんて言うから…。痛かったよね。苦しかったよね。本当にごめんなさい…。」

美琴は私が事故にあったのは駅前のカフェに行こうと誘った自分が原因だからだと思ったらしく申し訳なさそうに泣きながら謝ってきた。

「なんで美琴が謝るの。気をつけてなかった私が悪いんだから美琴は悪くないよ?一番悪いのは信号無視した車だけどね。」

そう笑いながら言うと美琴は安心した反面申し訳なさそうに

「ごめんね。ありがとう。」

と笑顔で言った。