一通り、お互いの話を終えた頃。

携帯電話が鳴り、断りを入れてさっと目を通した。
それを見た彼女がふいに手招きをする。

「……?」

その様子に、私も耳を貸すように少しだけ身を乗り出す。


「あれからどうよ?」


真剣みを帯びたその言葉に「何が」なんて聞き返すこともなく。同じトーンで言葉を返した。


「……彼のこと?」


楽しかった高校時代。
その時に出会った、あの人。

彼が居てくれたおかげで楽しくて、幸せで。
まさにキラキラした青春そのものだった。



だけどその頃の事を思い出す度、同時に切なさも溢れてくる。



食後に出てきた紅茶の水面へとゆっくり移動した私の視線。
同じように、自分のコーヒーカップを見つめながら彼女がポツリと呟いた。



「色々あったもんね……」



その言葉に共鳴するように、扉のベルがリン──と音をたてた。