「ハルカ!」


扉を開けて店内をゆっくり見渡していると、窓際に座っていた女性が私を呼んだ。


「瞳ちゃん!久しぶり~!」


お互い満面の笑みで手を振る。
こうして会うのは何年ぶりだろう。


「卒業式以来だよね?」


私がストールを外しながら聞くと、彼女も懐かしそうに目を細めて頷いていた。


「外寒かったでしょ?とりあえず、何か頼も。」


言うなり彼女はさっと手を挙げてウェイターに合図をした。
私は手荷物を足元のカゴへ入れつつ、メニュー表に目線を落とした。


「ん~と。ハルカ、とりあえずケーキセットでいい?」

「うん、いいよ」

「飲み物は?どうする?」

「そうだなぁ……。じゃあ私はダージリンのストレートで」

「あたしはホットのアメリカン」


テキパキと注文を決めると、B5サイズの小さなメニュー表をぱたんと閉じて所定の位置に戻した。