その日の夜、
彼は故郷サイド3に残して来た婚約者に宛てて手紙を書いていた。

戦争がジオンの勝利で終わり、自分がサイド3に帰還したら、故郷の小さな教会で結婚式を挙げようと。

それは彼が彼女についた最初で最後の嘘だった・・・。



時は宇宙世紀0079年。

地球連邦軍とジオン公国軍との間で始まった『一年戦争』と呼ばれる戦いは佳境を迎えつつあった。

地球上では既に劣勢に立たされていたジオン軍は、起死回生の策として、連邦軍本部のある南米ジャブロー基地への奇襲攻撃を計画していた。

ジオンの赤い彗星こと、『シャア・アズナブル』大佐がジャブローの正確な場所を突き止めたからだ。



彼が配属されていた、北米大陸に位置するキャリフォルニアベース。この基地のほぼ全戦力がジャブロー奇襲攻略作戦に投入される事が決定していた。

しかし、連邦軍との圧倒的な戦力差を考えると、この作戦の成功率は極めて低い物と言える。


決して生きて帰る事が出来ないだろうと兵士の誰もが感じつつ作戦当日の朝を迎えた。