「ついてくんなっ!」
「どうして、僕はマルガの伴侶なのに」
「だからっ……」

 ああっ、もう疲れる。
 さっきからこのやり取りの繰り返し。
 まったくもって進展なし。
 こうなったら、無視だ、無視。
 あたしはずんずんと前に歩き出す。
 しかし、顔だけは美少女の青年はあきらめもせず後ろからぴったりくっついて来る。
 うっとうしいことこの上ない。
 あたしが今朝拾ったのは子猫ほどの大きさの変な生き物だった。
 それがあたしの目の前で金の髪、青い瞳の美幼女に変身しやがった。
 今となっては竜の仔だとわかったそいつにあたしは、ついうっかりエイシェルという名を与えてしまったのが間違いの元だったのかもしれない。
 今や顔だけは美少女で通るけれど、ガタイだけは人並み以上にいいこいつはこいつで、過去に遡って生まれたばかりのあたしにマルガリータという名を与えてきたと言い張っている。
 それで、古代竜たちの間で交されるはずの名づけの儀式は成立し、あたしはこいつの伴侶だとかいう。
 まったくもってわけがわからないたわごとを抜かしやがる。

「マルガ、マルガリータってば」
「……」

 無視だ、無視。

「マルガ、マルガさ~ん、ねえって」
「うわっ! ちょっ、やめっ」

 後ろに引っ張られたあたしは、あっという間にこいつの腕の中に抱き込まれる。
 肩のあたりに顎が乗せられ、囁く言葉が耳元をくすぐる。

「僕のマルガリータ」

 うわぁー、不覚にも今どっきりしてしまったっ!
 どうするんだ、こんなのにときめいて。

「離せっ!」

 焦りながら全力で暴れると、あっさりと離してくれた。