うそっ。
 森の出口に差し掛かろうかと言う時に人影を認めた。
 逆光で顔はよく見えないが、夕日を弾く髪はふわふわの金髪。
 長身でたくましい体つき。
 でも、遠目だろうが逆光だろうが見間違えようのない美貌が見て取れた。人間離れしていると言ってもいい。
 そしてあたしは今日、この手の人間は三人目だ。
 きっとあの一族の関係者に違いない。
 もう勘弁してよ。
 あたしはくるりと背を向けた。
「待って、マルガ」
 はたして彼が呼び止めてくる。
 男性的な低めな声には、まだ成長しきっていないような幼さの名残が入り混じっている。
 でも、構っちゃいられない。
 触らぬ何とかには祟りなしだ。
 あたしは無言で足を速める。
 なのに、奴はトンデモナイことを言い放った。
「マルガ、僕がわからないの? エル、エイシェルだよ」
 あたしのエルは小さなかわいい女の子だ。こんなでかい図体の男じゃない。
「そんなわけないでしょ」
 一刀両断である。
 けれど、奴はめげなかった。
「そんなわけがあるんだよ。だって僕は君を寂しがらせたくなかったから、君と別れたすぐ後を狙って翔んで来たんだよ。さすがに自分と鉢合わせはしたくなかったから、あのすぐ後ってわけにはいかなかったけど」
 あたしは構わずどんどん足を進める。
 相変わらず奴の言っていることはさっぱりわからない。
「僕にとっては百年の時が立ったんだ。ねえ、寂しかったんだけどがんばったんだよ。約束だったし。待って、マルガリータ」
 え?
 何て言った?