香苗は高校の前に来ていた。

秋菜に会うために。

顔は何度か見て知っていたので、出て来るのを待てばいい。

しばらく待っていると秋菜が出て来た。

香苗が声をかけると、戸惑いながらも微笑んだ。


「あの…私、司君と同じクラスなんですけど…
こんな事言わない方がいいのかもしれないんですけど…
司君、すごい遊んでて…私もその…誘われてて…」


香苗の話を秋菜は黙って聞いていたが、フッと笑い


「司はそんな事絶対にしないよ。
それは私が一番知ってる。
司に何か嫌な事された?
だったらごめんね」


と優しく語りかけた。

香苗は惨めな気分になった。

傷付けて、壊してやろうと思っていたのに、逆に二人の信頼の強さを見せ付けられたのだから。

それと同時に二人に嫉妬していた。

自分が持っていないものを二人が持っている事が妬ましかったのだ。

香苗は秋菜を無言で睨みつける事しか出来なかった。