司が小学校を卒業した日、秋菜は家で一人、留守番をするはめになった。

親戚の結婚式に呼ばれた両親に


「チケット二枚しか取れなかったから、あんたは留守番ね」


と置いて行かれてしまったのだ。


「男は連れ込むなよ!」


父親が何度も念を押していたが、あいにく呼べる男はいない。

友達に声をかけたが、皆デートやバイトで忙しく、誰も来てくれなかった。


「一人か…」


静かなリビングでそう呟いたら寂しくなってくる。


コンコン


窓を叩く音がして顔を上げると、司が笑いながら手を振っていた。


「母ちゃんが『秋菜ちゃん一人じゃ心配だから行ってきて』って。
ほら、これ晩飯。」


重箱を秋菜に渡すと、ドカッとソファーに腰を下ろした。


「ってわけで、俺、泊まってくからさ」


ニヤリと笑い秋菜を見ると、楽しげに鼻歌を唄い出した。