「秋菜?玄関先で何突っ立ってんの?」


母親の声で我に返ると、キスをされた唇にそっと指を当てた。


「…嘘でしょ…初めてだったのに…」


突然奪われたキス。

しかも相手はまだ小学生の司。

驚きとショックと怒りで頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。


「あれは多分、アクシデント!
そうだよ!絶対そう!」


何とか気分を落ち着かせた秋菜はそう思うことにした。

司となんて考えられない。

相手は小学生。

恋愛対象にならない。



それでも治まりきれなかったので、秋菜はキスの事を友人の神崎友利に話した。

友利は笑いながら


「マジで?!
初キス奪ったのが小学生なんてギャグみたいじゃん!
てか、奪われる秋菜もマヌケー」


と言ったが、しばらく笑うと真顔になり


「でもさ、大人になるから待っててなんて、その子、マジで秋菜に惚れてんじゃん。
どうすんの?」


と尋ねられた。


「どうするのも何も…ありえないじゃん」


秋菜は困った顔で溜息をついた。