「秋菜!いねーのか?」

岩井司の声が聞こえる。

吉川秋菜は寝ぼけながらその声を聞いていた。

ドンドンてドアを叩く音が響くが、それさえぼんやりとしたBGMに聞こえる。


「入るぞ!」


痺れを切らした司が部屋に入ってきた事も知らず、秋菜はまどろみの中にいた。


「無防備に寝やがって!
襲うぞ、コラ!」


ズシリとのしかかる重みに目が覚めると、司の顔が近くにあった。


「キャー!」


けたたましい叫び声を上げて秋菜が飛び起きると、司はチッと舌打ちをして


「もうちょいだったのに」


と残念そうに呟いた。


「あ、あんた、何やってんのよ!
何で勝手に人の部屋に入ってんの?!」


うろたえる秋菜を鼻で笑いながら、大人びた表情で


「そりゃー、秋菜を迎えに来たに決まってんじゃん。
誕生日にデートは定番だしな」


と笑った。