「よろしくお願いします。」


そう言って私の前に現れた彼は、スッと伸びた鼻に綺麗な輪郭、陶器のような綺麗な肌をしていた。
世間でかっこいいと言われる顔立ちであるかどうかは分からないが、私が想像していた先生とは遥かに違った、爽やかな印象の男性であった。
それでいて、チャラチャラした印象はなく、どちらかといえば内気な性格なようである。

個別指導の塾であるため多少の会話は交わしたが、そこにこれといって特徴のある会話は無かった。




寝る支度を終えて、布団に入り、彼のことを考えた。それが至って普通の流れで行われたため私は自分自身に驚いた。
というのも、授業を受けている最中は彼に対しての感情を一切もったいなかったからである。
恋というのはこのように始まるのであろうか。
今まで普通の人並みに恋愛をしてきたが、それが急にままごとのように感じられた。
これは、嬉しさと恥ずかしさと少しの嫌悪感の混ざった、私にとっての新しい感情であった。