雨がさっきよりも強くなってきた。遠くで雷の音が聞こえる。

木々の真っ黒なシルエットが不気味で、私は窓の外を見るのをやめた。

「……そういえば、今日ってハロウィンじゃない?トリックオアトリート!」

スマホを見ていた美湖が私に手を出す。

ハワイから帰ってきたばかりでわからなかった。しかし、夏樹はさっと顔色を変え、私はハロウィンという単語に反応し、美湖の手を思い切り叩いた。

雨の音にバチンという乾いた音が混じる。美湖は驚いた目で私を見た。

「やめて!!ふざけないでよ!!」

ハロウィンにはいい思い出がない。だからか体が震えてきた。

「……あの子のこと?あの子は自分から死んだんだよ?」

美湖が冷たく笑う。

そうは言っても、いい思い出などない。

私は八年前のーーー私たちが小学六年生だった時の出来事を思い出した。



私はいつだってお姫様だ。常にクラスの中心にいるのが当たり前。

運動会では、自分は楽な種目を一番最初に選ぶ。私の種目に人が多く集まりジャンケンをしなければいけなくなっても、私はジャンケンをしなくていい。汗をかいて肌を焼くようなことなどしたくない。

文化祭の劇では、お姫様の登場する物語をする。シンデレラでも、白雪姫でも、どんなお姫様でも主役はもちろん私。私以外に主役なんて務まらない。だってクラスで一番かわいいのは私だから。