だれかがはいってきたことにきづかないくらい
写真にみいってしまっていた。
声のほうに顔をむけると、顔なじみの生徒が。
「伊藤か、びっくりした」
1年生のころから補習組の常連で、
4月から3年生になった伊藤 幸和。
真面目で、数学以外の成績はよくて、
優秀な生徒だと
教員たちが職員室ではなしているのを
よく耳にする。
そんな彼女だけれど、
数学だけはどうもにがてみたい。
「すごくきれいなひとですね」
さっきまで俺がみていた写真に視線がうつる。
「……うん。
先生にとってだれよりも大切なひと」
「そう……なんですね」
ほんの一瞬、さみしそうな顔をしたのは
きのせいだろうか。