ぷっくりふくらんだ桜の蕾が、
いまかいまかと咲く瞬間を待ちわびる3月。
あたしは、3年間通った高校を卒業した。
「あっというまだったね」
右手に持った証書筒を見ながら、
となりに話しかける。
「そうだな」
あたしとつながっている
右手とは反対の左手で、
あたしが持っているものと同じものに
目を向ける彼。
いつも、この横顔を見てきた。
あたしの青春は、ぜんぶ、ぜんぶ、
このとなりにいる光輝とだ。
「もう明日から、
この道をこうして光輝と歩かないなんて
実感がわかないなぁ〜」
そう思うと、
1歩、1歩、踏みしめて歩いてしまう。