「マジでうれしい……。夢じゃないよね」


自分のほほつねる葛木くんは、
「痛っ」と言って夢じゃないことを確認して、
ひとりで感動している。


「ふふふ。葛木くんってばおもしろい」

「“爽”でしょ。恋人どうしになったんだから」


『恋人』


心には無縁だと思っていた。


「俺も、心って呼んでもいい?」


心が男の子を苗字でしか呼ばないように、
心自身も
下の名前で呼ばれなれていないから、
自分の名前を呼ばれるだけで
胸がドキッとなった。


「うん。うれしい」






“爽” “心”


おたがいに慣れない呼びかたで
もういちど名前を呼びあった。






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