優香のほうを向くと自然と廊下が見えるから、遥斗が帰ってこないか頭の片隅で気にしてるんだけど……遥斗はまだ帰ってきていない。

もしかしたら、帰るときは反対の階段を使ってこの教室の前は通っていないだけかもしれないけど…。


そのときだれかが廊下を歩いてきたけれど、隣のクラスの担任だった。……なんだぁ。


「笑ちゃん、どうしたの?さっきからわたしの後ろのほう気にしてるけど」


鋭い優香に感づかれ、冷や汗をかきそうになった。


「う、うん!?なんでもないよ!続きお願いします!」


遥斗がどこへ行ったのかなんて、わたしには関係のないことだ。気にしちゃいけない!!

頭の中、100個の単語で埋め尽くさなきゃ!!


「そう?えっとね、じゃあ次は日本語を言うから、英語に変えてね?」


「うんっ」


それから約30分、優香がずっと付き合ってくれているというのに、わたしはなかなか単語が覚えられなかった。

いつもならもっと覚えられるのに、と悔しくなる。

なかなか覚えられない理由に心当たりがあり、余計にむしゃくしゃする。

……このむしゃくしゃを取り払わないと、せっかく優香が一緒にしてくれているのに、優香に申し訳ない。

100単語全部覚えたという優香も、本来なら別の勉強ができるのに。


「……ねえ優香……わたしちょっと、お腹痛いかも」


そう言ってお腹を押さえた。