「笑ちゃん、よかったらわたしと一緒にする?暗記って一人でするより二人で出しあったほうが覚えられるから!」


「優香、いいの!?やるやる~!!」


「笑ずり~!!」


「だって竜の席遠いんだも~ん」


「くっそ~!!」


「あ、もうチャイム鳴るよ~」


優香はそう言って、机のなかから英単語帳を取り出した。


わたしも用意しなきゃ!!

でも、机のなかを探すのに単語帳は見当たらない。

あれれ??

あ、そういえば昨日ロッカーに入れたんだった!

そのことを思い出して後ろのロッカーへ向かう途中。


「……ッ!!」

え………っ。

わたしはまだロッカーにたどり着く前の通路で、思わず足を止めた。

廊下を歩くある人物に、ひどく驚いたからだ。

遥斗………!

廊下を歩く遥斗を目にした。普段ならそれだけなら驚かない。

遥斗が歩いていった方向に、特進クラスはない。特進クラスがある方向から、歩いてきたのだ。

もうすぐチャイムは鳴るのに、どうして……?

しかも、なんだかすごくしんどそうに見えた……。

もしかして、昨日の雨のせいで、風邪引いたとか……?

そんな考えがもんもんとわたしの頭のなかを巡る。

そのときチャイムが鳴り響いて、わたしは動かないままではいられなくなった。

ロッカーへ単語帳を取りに行き、急いで自分の席へと戻った。