“心底”

この言葉があまりに似合いすぎている。

わたしはどうしてこんなにも遥斗を怒らせてしまうんだろう。

だけど今回は、そこまで言われる筋合いなんて、ないと思う。

だってわざわざ鍵を届けてくれた竜を濡れたまま放っておけるわけがない。

どうしてそこまで、言われなきゃいけないの?

遥斗、勝手に不機嫌になって。勝手に怒って。


……勝手に、わたしを嫌いになって。


前触れもなく、突然に。


あまりに急だったから、わたしは未だに、遥斗の存在を割り切ることができないんだ──


「……ッ……わたしのほうが、腹立ってるよ……!!遥斗、いきなり無視してきて、冷たくなって……!今までずっと、仲良くしてたのに……!!わたしは前みたいに仲良くしたいって思ってるんだよ……!?」


遥斗を真っ直ぐに見上げ、はじめて自分の気持ちをぶつけた。

わたしは前みたいに、一緒に登下校したり、たまに甘いものを食べに行ったり、映画を見に行ったり、お互いの家でご飯を食べたり……楽しかったあの頃に、戻りたい。

遥斗がわたしの隣にいること、

わたしが遥斗の隣にいることが当たり前だった日々に……。


お願いだから……。


──どんなに小さくてもいいから、一筋の光を求めた。


「前みたいに……?」


わたしの耳には、遥斗の声が……震えているように聞こえた。


「……今まで通りなんて、できるわけないだろ……!俺はお前が──…っ」


──ガチャッ──


──遥斗の言葉を、その音が遮った。


「…あら、遥斗くん?」


わたしも遥斗も、扉のほうに顔を向けた。