冷たい幼なじみが好きなんです



「?だれだろ」


「……っ」


竜の手を抜け、イスから立ち上がり、キッチンのほうに設置しているインターホンのカメラへと向かった。


宅配便かな。もしそうだとしたら、こんな雨のなかお疲れさまだ。

雨は、竜が走っているあいだに降っていたときよりもずいぶんと強くなっている。音だけでそれがわかる。


インターホンのカメラをオンにすると、そこにはいつもの道路だけで、人はだれも映っていなかった。


あれ、おかしいな。

インターホン、たしかに鳴ったよね。

イタズラなんてされたことないし、もしかしたら宅配物が濡れないようにインターホンを押すだけ押して、扉の前にいるのかもしれない。

そう思ってリビングにいったん竜を残して玄関へと急いだ。


一番手前にありすぐ履けるローファーに足を通し、鍵を開け扉を開けた──


「……………遥斗………?」


心臓が止まるかと思った。


だって、扉を開けたそこには………ずぶ濡れの遥斗が立っているんだから──。


「…鍵、部屋に忘れた」


おでこに張り付く前髪をうっとうしそうに軽くわけながら、短くそれだけ言った。


ストロベリームーンの日以来に遥斗が目の前にいて、ただそれだけのことなのにわたしの頭のなかはすでに混乱していて、遥斗の言葉を理解するのに時間がかかってしまう。


鍵を部屋に忘れた……つまり家に入れないってこと……?

思いがけず雨が降ってきて、ずぶ濡れになってしまったのに家にはだれもいなくて、しょうがないからいったんわたしの家に来たってこと……?


バケツの水をかぶったかのように、竜の比じゃないくらい、ほんとうにずぶ濡れの遥斗。

このままじゃほんとうに風邪を引いてしまう。


「と、とりあえず入って……!」


ええと、ひとまずバスタオル持ってきて、あと、シャワーもあびたほうがいいよね…?


まさか遥斗が訪ねてくるなんて予想外すぎて、思うように頭がまわらない。


やけどの手当てをしたのが最後で、もう、遥斗がわたしの家に入ることなんてないと思ってた──


「──笑、大丈夫…………か」


玄関のほうから脱衣場に向かおうとしたら、リビングからこちらにやってきていた竜と、ぶつかりそうになった。


竜は遥斗の姿を目にして………その場で立ち止まった。