冷たい幼なじみが好きなんです



「竜、そこ座って?」


リビングに入ってきた竜に、いつもご飯を食べているテーブルのイスを指差す。


スプーンでかき混ぜたコンポタを2杯テーブルの上に置いて、竜の隣のイスにわたしも腰かけた。


「は~っおいしい」


「あったまるわ~」


わたしはまったく猫舌じゃないから冷まさずにごくごくと飲みほす。竜もそうみたいだ。


「いきなり降ってきてまじでびっくりした。今日雨ふるなんて言ってなかったよな?」


「うん。晴れの予報だったよ。竜、ほんとごめんねえ」


「まあ仕方ねーよ。……つーかむしろラッキーだし」


「え、なんて?」


最後のほう、なんて言ったのかよく聞き取れなかった。


「なんでもね~よ!」


「なにそれ~!…てゆか竜、なんか幼くない~!?」


いつも明るい茶髪の毛先をあっちやこっちやと遊ばせているくせに、雨に濡れたせいでぺしゃんとして真っ直ぐになっている。

いつもの竜となんだか雰囲気がちがい、まるで別人みたい。


「うるせ~!言うなよ!」


なんだか恥ずかしそうに笑う竜。これはちょっとからかいたくなってきた。


「あははっ、もしかしてほんとは直毛なの?」


思わず竜の髪の毛に手を伸ばす。

毎日綺麗にセットしてるから、そんな直毛だなんて思ってなかった。

てっきり生まれつきふわふわしてるのかと思ってたよ。


竜の髪の毛に触れるまで、──あと1センチ。


──パシッ……と手首を、捕まれた。


え…っ?


「笑さ……そーやって簡単に…」


──ピンポーン。


そのとき、外からのザーザーという雨の音より何倍も響くインターホンが、なんの前触れもなくまるでわたしたちを制止させるかのように鳴った。