約10分後、ぜえぜえと息を切らした竜の姿が門扉の前に現れた。
「竜っ!!」
「あー、しんどっ」
10分で着くわけないから、全力疾走してくれたにちがいない。
「ほんとごめん!!」
髪も制服も濡れてる。
鍵を忘れた自分のせいだから、さすがに申し訳なさでいっぱいになった。
門扉までかけよって開けると、
「おい、笑が濡れるだろ、そこで待ってろよ」
なんて…竜ってそんなに優しかったっけ?
カラオケであんなことを言われたばかりだし、少し胸がくすぐったくなった。
「鍵、ほんとにありがとうっ!!竜、タオル貸すから家あがって?」
鍵を受け取ったわたしは、そのまま竜を門扉のなかへと招き入れた。
「え、まじ?」
「っはやく!濡れるでしょ!!」
「お、おう」
とにかくはやく体の冷えてしまった竜をどうにかしようと、急いで家の鍵を開けた。
「どうぞ!」
「…おじゃまします」
…バタン
──遥斗の言いつけなんて、忘れて。



