冷たい幼なじみが好きなんです



たった今から探しに行こうとしたのに、もうその必要はなくなった。


「竜、今どこ?取りに行く!!」


もう家に着いてるのかな。

わたしは聞きながら門扉を開けた。もう出る準備は万端だ。


『いや、俺が届けに行くわ!ちょっと待ってろよ』


竜の言葉に門扉の外に出ようとした足が止まる。


「え、でもわるいし…」


『全然いいっつーの、マッハで行くからな』


「竜~…ありがとう!」


竜、超優しい。感激。


ついさっき開けた門扉を閉めて、さっきまでいた扉の前にささくさと戻った。


待機。ひたすら待機。


家の前でただ待機するなんて、変なかんじだ。


そういえば……中学生のとき、家の鍵を自分の部屋に忘れて学校に行ってしまって、帰ったときに家に入れなくなったときがあったっけ。


あのとき……お母さんかお父さんが帰ってくるまで、遥斗の家で待ってたんだよね。

遥斗のお母さんはそのときもう帰ってきてたから、ついでに晩ご飯もごちそうになったっけ…。


だけど……今日は、ここで一人で待たなきゃ。


遥斗の家のインターホンを気軽に押すことなんて、できない。


“俺とふたりでいるときくらい、余計なこと考えるな”

竜に言われた言葉を思い出す。

あれがもし遥斗のことだとしたら……わたしはまた、竜がわざわざ届けに来てくれている最中に、遥斗のことを考えてしまった。

わたし、いい加減にしなきゃだよね……。

遥斗のことをいくら考えたって、遥斗がわたしを好きになってくれるなんてことあるわけないんだから……。


──サー…


……ん?


突然視界がそれとなく暗くなって、よく見てみると……細かい雨が降っていた。


「うそ…っ」


竜はきっと傘を持っていない。竜が濡れてしまう。

傘持っていかないと!

…って、その傘は今この扉の向こうにあるんだった…。

どうしよう…。

でもどうすることもできず、わたしは今屋根のあるこの場所で、申し訳ない気持ちを抱えて竜を待つことしかできなかった。