冷たい幼なじみが好きなんです



坂道を下り公園を過ぎ、家の前に着くと、お父さんとお母さんの車がなくて、まだふたりは帰宅してないことがわかった。


お腹すいたし、先に冷蔵庫にあるもの食べてようかなあ、なんて思いながらカバンの中から家の鍵を取り出そうとすると。


「……あれ」


鍵が………ない。

なにこの感覚。

ショッピングモールで携帯をなくしたときとデジャヴだ。


カバンの隅から隅まで、お土産でもらったタワーのキーホルダーがついた鍵を探しまわる。

わたしはカバンのなかぐしゃぐしゃだし、鍵は小さいから、どうせ底のほうに隠れてるんだろうと思ったのに、やっぱり鍵は見つからない。


どうしよう、どこに落としたのかな。

携帯といい鍵といい、最近物を落としすぎだ。

さすがにぼーっとしすぎている自分を省みていると。

カバンのポケットに入れている携帯が軽快な音を立てて鳴り響いた。

車が通らないせいで静寂のなかいきなりの着信音にびっくりしながらも、すばやく電話に応答した。


『もしもし、笑か?』


わたしに電話をかけてきたのは竜だ。

先ほどまで一緒にいたのに、伝え忘れたことでもあるのであろうか。


『笑、カラオケに鍵忘れて帰っただろ?カラオケに入るとき俺が名前と電話番号記入したから、ついさっき俺に連絡があったんだよ~』


ああ、これは天の救いだ。