遥斗がいなかったら、わたしはもしかしたら竜を好きになっていたかもしれない。その可能性は十分にある。
だけど今は……ただただこんなわたしを好きでいてくれていることに、感謝したい。
「竜、…ありがとう。わたしも竜と一緒にいるの、すごく楽しいよ。これからも仲良くしてね」
心から本音と笑みがこぼれた。
竜の気持ちで、わたしも心が満たされたよ。
わたし、竜のこと、特別な友達だからね。
「………っ………。か、帰るぞ」
そう言っていきなり立ち上がった竜。すばやく鞄を手に取り出す。
「えっ?まだ、20分もあるけど…」
「もうこれ以上はやばいんだよ分かれウルトラ鈍感が」
「はい????」
まだ20分も時間は余っているというのに、竜はなぜだかささくさと部屋を出ていってしまった。
まだ歌いたい曲あったのにと思いつつ、わたしも急いで鞄を手に取り、竜の後ろへ続いた。
「じゃ、気をつけて帰れよ!」
カラオケボックスを出ると辺りは少しだけ暗くなっていた。
竜とわたしは帰る方向が真逆のため、その場でわかれた。
「うん、ばいばい!また明日ねー!」
大きく手を降ると、竜はふっと笑って同じように振り返してくれた。
わたしは家までの道を軽い足取りで歩き始めた。



