「あと30分、なに歌うかな~」
竜はそう言って機械を操作しはじめた。
わたしは返事ができなかった。
余計なことって………。
竜は、わたしが遥斗のこと考えてるの、気づいてるの…?
竜には、遥斗が好きなこと、言ってないのに…。
それともただ、俺と遊んでるときくらい、ぼーっとするなってこと…?
竜の温もりと感触が残った手のひらの、行き場をなくした。
だけどひとつだけ、わかることがある。
「…ねえ、竜」
「んー?」
のどが渇いているのか、返事をしたあと、コップを手に取りコーラをごくごくと飲み始める竜。
「……竜って、わたしのこと……まだ好きなの?」
「ッブー!!!!!!!!!」
「きったな!!!!!!!」
竜は口からコーラをジェット水流のごとくふんだんに噴射した。わたしとは反対の方向を向いてくれたのが幸いだ。
「げほ、げほっ」
「ちょ…っ大丈夫!?」
竜はあと数回咳をして、なんとか息を整えたようだ。
「ったくよー……」
ばつが悪そうな表情を浮かべて、机に顔を伏せたと思ったら。
「……スーパー鈍感のくせに」とつぶやいて、目線だけちらりとこちらに向けて軽くにらまれた。
えっと……それはつまり、肯定ということでいいのだろうか。
聞かずにはいられなかった。
だって……わたしの手を握る感触も、瞳も、言葉も……すべてがわたしを好きだと言っているようだったから。
一応一度告白されているし、優香にあんなことを言われたからそう思っただけで、もしそれがなかったら気づかなかった自信しかないけれど…。



