「悔しい~!!」
「ま、俺の実力こんなもんよっ!」
悔しすぎる!!!!
竜の点数は、──94点だった。1点差!!たった1点なのに、負けは負けだ。
「ここに優香がいてくれたら、優香ならぜったい95点以上とってるのに~!!」
優香はほんとに歌がうまいんだ。4月にはじめて行ったときには、歌手になりなよ!?て思ったくらい。
「優香っちいたら、俺も自信ないわ~!」
「優香に負けるのはいいけど、竜に負けるとか~!!」
「おいおい、俺の立場!!」
「どうせ今日のカラオケ代おごれとか言うんでしょ~?」
きっとそうだ!!
そうじゃなかったらなんか食べ物おごれとか、課題見せろとか、あとは………うーん、なんだろう、日直変われとか!?
そんなことを頭のなか巡らせていると、
「ん」
隣に座る竜の大きな手のひらがわたしの真ん前に差し出された。
「え?」
ん、って……なに?
「手、繋いで」
わたしたちの部屋の外からは、BGMの音や、他の部屋の歌声などが聞こえてくる。
わたしたちの部屋は……えらく、静かだった。
「…こう?」
差し出された右手を左手で握り返す。これは握手だ。
竜の体温が伝わる。遥斗とは、またちがう。温もりも、大きさも、感触も。
「俺が聞いてほしいことはー、」
ぎゅっと手のひらに優しい力が加わって。瞳をまっすぐに見つめられて。
「欲は言わねーから、俺とふたりでいるときくらい、余計なこと考えるなってこと」
そして、パッと離れた。



