「曲、入れてねーだろ?」
「ああっ、ごめんごめん!」
「………」
わたしは急いでカラオケの機械を操作した。う~ん、なんにしよう~、もうこれでいいや!!とテキトーに選んだのに。
「あ、それ、俺が次いれようとしてたやつだぞ!」
まるでおやつを取られた子供みたいにすかさずそう突っ込まれた。
「え、うそっ?先選んじゃった~」
「じゃあさ、点数低いほうがいうこと1つ聞くってことにしよーぜ!」
ひらめいたようにいきなりそんな提案をしてきた竜。
「いいよっ!」
わたし、この曲超歌いやすいから負ける気がしない!
今までの歌よりも音程や伸びを気を付けながら歌い上げた。
結果は──93点!
「やったあ~!今日初の90点代~!!」
竜もまだ80点代しか取ってないもんね!!
「おーし!負けね~!」
気合いを入れて歌いはじめた竜。悔しいけどかなり上手い!!さっきまでアイドルのダンス踊ってたくせに本領発揮してきたな!!
「喉、渇くわ~」
竜はそうつぶやいて、間奏のあいだにコーラを一口ゴクッと飲んだ。
竜の喉でシュワシュワとはじける炭酸の音が、ここまで聞こえてくる気がした。
わたしは炭酸ジュースが苦手だ。
それには理由がある。
小学校低学年のとき、遥斗の家でテレビを見ながらおやつを食べていたときのこと。
遥斗のお母さんは、ソーダジュースも用意してくれた。
内容は忘れたけど、そのテレビがめちゃくちゃ面白くて、わたしはソーダを口に含んだまま爆笑してしまった。
すると口を閉じていたせいか、ソーダが鼻に逆流してきたのだ。そのとき鼻の中がすごく痛くなって、それがトラウマで炭酸ジュースを飲まなくなった。
遥斗はテレビを見てたいして笑ってなかったのに、わたしの鼻からソーダがダラダラ垂れたときにはわたし以上に爆笑していたんだよね。
………そんな下らない思い出も、わたしは炭酸ジュースを目にするたびに思い出してしまうんだ。



