冷たい幼なじみが好きなんです



「アハハハハっ!!」


竜といるとほんとに面白い。ノリのいい曲はとことんノるし、声馬鹿でかいし、地味に歌上手いし、なぜかアイドルの曲のダンス完コピしてるし。


「なんで踊れるの~!?!?」


「姉ちゃんがアイドルオタクなんだよ!一緒に練習させられた!」


「ええ~!?ちょ、もっかい今の曲入れて踊って!!優香に動画送る!!」


「おいおい、動画は恥ずいからやめろ~っ!!」


「いいじゃ~ん!!」


「俺とカラオケ一緒に来たやつだけの特権なんだよ!!」


「じゃあ、絶対3人で来なきゃね!」


「おうよ!!」


優香には弟がいて、竜には姉と兄がいる。

わたしは一人っ子だ。

もし兄弟がいたら、わたしの家は今よりもっとにぎやかだったのかな。

趣味を共有したり、たまには喧嘩したり、時には頼りにしたり。

一人っ子ってさみしいとかつまらないってよく聞くけど、わたしは一度も思ったことがない。

だって、小さい頃からずっとずっと遥斗がそばにいたから。

遥斗がいてくれたから、今のわたしがいると言っても過言ではない。

受け身の優しい遥斗がいたから、わたしはこんなにものびのびと明るい性格に育ったのかもしれないから。

…………わたしは、なにかひとつでも遥斗の役にたてたことはあるのかな。

もしかしたら………わたしが幼なじみじゃないほうが、遥斗にとっていい方向に進んだことも、あったかもしれないよね………。


「──笑、おい、笑?」


竜の声にハッと我に返った。わたしってば、自分でも無意識のうちに遥斗のことを考えてしまっていた。