「遥斗ってば……っ」


手探りで腕を伸ばしてみた。だけどどこにも触れられない。


遥斗は黙ったまんまだ。せめてなにか言ってほしい。


恐る恐る足を一歩ずつ前に動かしてみる。


一歩、二歩……三歩目で、わたしの足になにか触れた。


なにかかたいもの。これはなに…?


その場で腕を伸ばしてみると、先ほどはどこにも触れられなかったのに、そこには温もりを感じた。


「…っ!」


一瞬でわかった。遥斗だ。遥斗の肩か二の腕か…その辺り。


だけどすぐに引っ込めた。遥斗の体に自分から触れる勇気はなかった。


そこでふと気がついた。遥斗の肩や二の腕が、わたしが腕を真っ直ぐに伸ばした位置にあるなんておかしい。


遥斗は今立っていなくて、どこかに座っているんだ。


……わたしの足にあたる、かたくてわたしの行く道をふさぐもの。

これってもしかして──。


「もう、遥斗、いい加減に──きゃあっ」


先ほどこの部屋に吸い込まれたときよりも強い力で、遥斗はわたしの腕を引っ張ってきた。


真っ暗闇に立っているわたしは自分の体をどう支えていいかわからないままバランスを崩した。