わたしのことを──真っ直ぐに、見ている。
その、冷たい瞳で。
もしかして、わたしに用事なの…?
でも……そんなわけないよね。
近寄るなって言ったのは遥斗のほうだから。
遥斗からわたしのところに来るなんて──
──かしゃんっ
遥斗の手のひらから、わたしの机に放たれたあるもの。
「……!」
それは……わたしのカバンにつけていたはずの、チャーム時計。
……えっ…?どうしてそれを遥斗が…?
ワンテンポ遅れてその疑問が頭に浮かび上がったときには、遥斗はもうわたしに背を向けていた。そして、スタスタとこのクラスから去っていく。
わたしは時計をそっと手に取った。
きっと朝……遥斗を抜かしたあとに、途中でカバンから外れたんだ。
それを、遥斗が拾ってくれて……届けてくれた。
遥斗から、わたしのもとへ来てくれた……。
嬉しい……。
無くさなくてよかった。
だってこの時計は、去年のわたしの誕生日に、遥斗がくれた大切なものだから。
そうだ、お礼、言わないと…!
わたし、遥斗の存在に驚いてなにも言えなかった。
「……。…笑。もうすぐチャイム鳴るぞ」
隣に立っている竜にそう言われたけど、わたしの足は自然と遥斗を追っていた。



