……えっ……?
まったく思考が追い付かない。
わたしは数分前まで、わたしの部屋のベランダに立っていた。
だけど遥斗に“こっちに来い”と言われ、遥斗の部屋のベランダに移った。……そこまでは理解できる。
……そのあと、いったいなにが起きた?
わたしはどうして今……遥斗の部屋のなかにいるの?
この部屋に入るのは、一年の冬にここで勉強を教えてもらった以来だ。部屋に置いてある物や、配置は特に変わってないように思える。
「遥…斗……?」
遥斗は窓を閉め、鍵も閉め、カーテンも……閉めてしまった。
「なに、してるの……?」
遥斗の行動がまったく理解できない。わたしはただ戸惑うばかりだ。
遥斗はこの部屋の出入口に向かったと思ったら、扉のすぐそばに設置されているボタンを押して、一瞬にしてこの部屋を真っ暗にしてしまった。
「……ッ!?」
真っ暗で、なにも見えない。
さきほどまでは赤い満月がわたしたちを照らしてくれていたけど……今のわたしの視界には、光るものがなにもない。
「遥斗…!?電気つけて…!?」
本当に真っ暗だ。自分の部屋だったら真っ暗でもだいたいの感覚で動けるが、遥斗の部屋となったらそうはいかない。
なんでこんなことするの…!?



