わたしのことを全く女として見ていないから、百合ちゃんがいるのに、こうして隣に呼べるんだ──。


そのことに気がついて……また、泣きそうになった。


喜んだり悲しんだり、我ながら忙しいやつだ。


たった数分……短い時間だったけど、わたしはもう十分だ。

これ以上隣にいると…………ダメな気がする。


遥斗はわたしのことを女として見ていなくても、こんな状況………百合ちゃんに悪い。


それに………こんなそばにいたら、わたし、簡単に“好き”が増えてしまう。


消すことはまだ難しいけど……少しずつ少しずつ減らしていった遥斗への“好き”が………一瞬で、積もってしまう。

……そしてまた、辛くなる。


もう…………離れないと。


「………わたし………もう、寝るね」


それだけつぶやいて、自分の部屋に戻ろうと遥斗のベランダの柵に手をかけた………のに。


わたしのその手は、遥斗の手によって糸も簡単に引き剥がされてしまった。


「きゃ……っ」


ぐいっと腕を引っ張られて、体が回転して。


視界には夜空と赤い月しかなかったはずなのに、視線の先には、しまっていたはずの遥斗の部屋の窓が開いていて。


そのなかに、吸い込まれた。