遥斗の手は…すぐに離れた。
だけど、離れたとしても……遥斗は今、わたしのすぐ隣にいる。
手を伸ばせばすぐに触れられる距離にいる。
……信じられない。
わたしもしかして……夢を見てる?
……ううん、これは現実。
だってさっき、遥斗の手のひらの感触も体温も、わたしがかつて触れたことがあるものだったから…。
でも、こんな状況夢でもおかしくない。
遥斗がこうしてわたしを隣に呼ぶなんて……。
しかも、これまでストロベリームーンを三回見てきたけど、その三回はお互いのベランダで向かい合って眺めていただけで、隣に呼ばれたことは、一度もなかったのに……。
いったいいきなりどうしたの……?
すごく嬉しいけれど、その反面戸惑いを隠しきれない。
背の高い遥斗の横顔を、こっそりと下から盗み見る。
綺麗な、横顔……。
思わず見とれてしまう。
遥斗のことはそりゃ綺麗な顔をしているとは思っていたけれど、好きだと自覚してから、ますますかっこよく見える。
サラサラな黒い髪。
大きな瞳に、筋の通った高い鼻。薄めの唇。
遥斗の顔は………整いすぎている。
整いすぎて、童顔な自分が嫌になるほどだ。
童顔で、身長は150センチ、幼児体型で……百合ちゃんと並べば、とても同い年には見えないだろう。
遥斗と並んだら……妹と思われるかもしれない。
もしわたしが、優香みたいに天使な性格だったり、百合ちゃんみたいな上品さを持ち合わせていたとしても…遥斗がわたしを好きになる確率なんて、0に近いのかもしれない。
もしわたしのことを少しでも女として見ていたら、彼女である百合ちゃんがいるのにこうして隣に呼ぶわけがない。



