「いつ告白されたの??」


さっきとは打ってかわって声量をいつもの3分の1にした優香。まだ残っているクラスメイトがいるから、聞こえないように配慮してくれたようだ。


「ええと……5月の最初だったかな」


5月の最初……そうだ、あれはゴールデンウィークに入る前日の放課後のことだ。

竜が、わたしの家の方向に用事があると言って、一緒に下校していた。だけどそれは口実だったみたいで……わたしの家の前で、好きだと、付き合ってほしいと、告白されたんだ。わたしのことを好きだなんて、まったく気づかなかったから正直すごく驚いた。

素直に嬉しかったけど……わたしは竜のことは友達としてしか見ていないから、お断りした。

竜と気まずくなったらどうしようと一瞬思ったけれど、竜はすぐに「わかった!これからも友達としてよろしくな!」っていつもの笑顔で笑ってくれたんだ。

だからわたしは気まずくなることなく今までどおり竜と接することができている。

あれから約1ヶ月経って、竜はもうわたしに対して恋愛感情はないのだと思っていたのだけど……。


「……これから先、もし、もう一度桂木くんに告白されたら……笑ちゃんはどうする?」


そんな例え話をわりと真面目な表情で尋ねてくる優香。


いきなりそんなこと言われたって……と思ったけど、答えは思ったよりもすぐに出た。


わたしはきっとあんなにも気があって一緒にいて楽しい竜にもう一度告白されても、もう一度お断りするだろう。


だってわたしは………遥斗が好きだから。


この気持ちは早く消さないといけないのに……わたしはまだ、消せないでいる。

その上、今夜なんて遥斗との思い出に浸ろうとしている………。


1ヶ月前竜に告白されたときは、竜のことを友達としてしか見ていないという理由でお断りしたけれど、今のわたしはまたちがう理由がある──遥斗が好きなんだ。


「遥斗くんのこと、まだ………忘れられないんだね」


よっぽど顔に出ていたのであろうか。優香は遠慮がちに静かにそう言った。


わたしは「……うん」と小さく頷いた。


「そっか……」


約2週間前、優香にここで遥斗のはなしを聞いてもらったことを思い出す。

あのとき、遥斗とちゃんと話そうと決めたのに、遥斗と百合ちゃんが付き合っていることを知って…………話し合うことを諦めたわたし。

わたしは逃げたんだ………。

それなのにまだ遥斗を好きだなんて………。

このまま想い続けても、苦しいだけなのに。

ほんとに……いつになったら、この感情は消えるのかな。