「──笑!!今日のカラオケ来ないってまじかよ!?」


放課後になり帰る準備をしていると、竜が驚いた顔をしてわたしの真ん前にバタバタと勢いよくやってきた。

わたしが言う筋合いはまったくないけど、竜も相変わらず騒がしいやつだ。


「うん、行かないよ?」


今日はクラスの10数人でカラオケに行く予定なのだ。


先週わたしも誘われて、そのときはオッケーしたんだけど、ストロベリームーンが今日見れることをネットで知って、行くのを急遽やめた。


だって、カラオケに行ったらたぶん帰るのは22時を過ぎてしまう。


今夜のストロベリームーンは20~22時が見所みたいだから、カラオケに行っている場合ではない。わたしからしたら行かないのは当然のことだ。

一人ぼっちでいいから……どうしてもあの赤い満月が観たいんだ。


「笑が行かねえなら優香っちも行かねえだろ~?」


「うん、行かないって言ってたよ」


「それなら俺も行かねえ~!つーか行かねえこと教えろよなー!」


竜はまったく、というふうにつまらなそうな顔をしている。そんな顔をされても困るんだが。


「ええ?わたしと優香が行かなくても、竜行ってくればいいじゃん!盛り上げ役なんだから!」


クラスでもムードメーカーの竜が行ったら、みんな喜ぶと思うんだけどなあ。


「めんどくせえー。今度、笑と優香っちと俺の3人で行こーぜ!」


「めんどくさいって。うんまあいいけど!」


わたしも優香もカラオケが好きだからね。優香の天使の歌声が聞けることに、今から楽しみになってきた。


「約束なー!じゃ、また明日な!」


「うん、ばいばーい!」


竜はわたしにぶんぶんと手を振って教室から去っていった。女子か。


「………。………笑ちゃん」


「ッわあ!?優香!?」


どこかに行っていた優香が、突然わたしの真ん前にひっそり……と現れた。


あまりに気配を感じなさすぎて、びっくりして失礼ながら大きな声をあげてしまった。