薬を塗り終えたら、ガーゼでカバーして、あとは包帯を巻いて最後にテープでとめるだけ。
ガーゼを敷き包帯で巻くくらいは、不器用なわたしでもできる。
グル、グル、グル…とこんなもんでいいだろうか。
最後にテープで包帯をとめて、完成だ。
「テープ貼るから…押さえてもらっていい?」
さすがに包帯をおさえながら上手にテープを貼ることはむずかしいため、遥斗に協力してもらおうと思ったのに…
「テープはいらない」
「えっ?」
いらないってどういうこと…?
テープ貼らないと、包帯ほどけちゃうよ…?
「そこの垂れてる包帯を、巻いてる端の下に通して」
理解できないわたしに、遥斗はそう指示した。
「え?こ、こう?」
「ちがう。反対」
なんでこんなことするの…?
そう思ったけど、遥斗の言うとおりに包帯を動かしてみた。
「そう。それで一周回して結んで」
「…っ!!て、テープ使わずできた…!!」
包帯を巻いたことも巻かれたこともないわたしは、テープを使わずに包帯ひとつで巻けちゃうなんて知らなかった。
「遥斗すごいっ!!」
びっくりして思わず顔をあげて笑みがこぼれた。
このとき、今日はじめて遥斗と目と目があった。
………あっ。
ハッとして急いでうつむく。
今一瞬、遥斗と気まずくなってること、忘れてた…。
「……っ……。……笑うとやっぱり……」
聞き取れなかったが、頭上で遥斗がなにかつぶやいた。
「え…?な、なに…?」
なんて言ったの…?
「なんでもない。帰る」
早口でそう言って突然立ち上がった遥斗。
「着るもんなんか貸して。あと、ジャケットとTシャツは?」
「ま、待ってて」
いくら隣の家だからって、タンクトップのまま外に出るわけにはいかないよね。
わたしはお父さんのクローゼットから羽織れるものを取りに行った。
それから、遥斗のジャケットとTシャツも。



