冷たい幼なじみが好きなんです



そのとき竜のポケットに入っている携帯から着信音が聞こえてきて、電話に出ると「竜、今着いた!遅くなってわるい!」という友達らしき声が聞こえてきた。


「笑。じゃあ俺、行くわ」


もし竜の友達が待ち合わせに遅れなかったら、竜は今ここにいなかった。

今日はとてつもなく偶然が多すぎる。もう続いてほしくない。


「うんっ、じゃあ、また明日学校で」


「おう!」


竜に手を振ったあと、気を取り直して今度こそ本来の目的であるケーキ屋へ向かっている途中。


わたしはカバンにいれていたはずの携帯がないことに気がついた。


え!?うそ…っどこにいったの!?


人混みのなか立ち止まり、カバンの隅から隅まで探し求めるけど、どう見たって携帯はない。


次から次へといったいなんなんだ。

なんだかいらいらしてきてため息がこぼれる。


だけどいらいらしたところで携帯が出てくるわけでもないため、必死に記憶を巡らした。


最後、いつ使った──?


たしか……──カフェ、だ。


…そうだ、竜がメニューを見ているとき、一瞬携帯を開いて……カフェのテーブルに、置いたままだ──!はっきりと思い出した。


はやく取りに行かなきゃ。


だけど……さいあくだ。きっと遥斗と百合ちゃんのふたりは、まだカフェにいるだろう。


そこに行かなきゃいけないなんて……。


カフェの前に戻り中をそっとのぞくと、わたしの予想通りまだふたりは食事の最中だった。


ふたりの視界に入らないように端という端を通って、さきほど自分が座っていた場所へと向かった。