冷たい幼なじみが好きなんです



「ほんと久しぶりだね~。話すの中3以来じゃない?」


百合ちゃんの言葉で、ふたりは同じ中学校出身ということがわかった。


それにしても、間近でこうして見ると百合ちゃんはますます美人だ。


例えば優香は“可愛い”ってかんじだけど、百合ちゃんは“綺麗”だ。今日なんて特に大人っぽい。同じ高校2年生とは思えない。


「去年も今年も、クラスちがうもんなー!つーか相田、もしかしてデートか?」


竜が気になった様子でそう尋ねると、百合ちゃんの頬がぽっと赤く染まった。そんな反応まで可愛いなんて。


「な、なんでわかるの?」


「まあ、格好てきに?」


「そ、そっか。そう見えるならうれしい!それじゃあまたねっ」


そう言って、わたしと竜が座っている席のそばに設置されているお手洗いへと向かっていった。


百合ちゃんは、お手洗いに行くためにこの道を通ったということがわかった。


もし行かなかったら、竜には気づかなかっただろう。


そして──遥斗も……わたしの存在に、気づかなかっただろう。


この席に座ったのは、わたしのミスとしか言いようがない。だって、ここに座ろうと言ったのはわたしなんだから。そもそも、カフェに入ってしまったこと事態が──失敗だったんだ。


たった今、遥斗と──目が合ってしまったのだ。


「……ッ!」


遥斗は、竜と百合ちゃんが話していたためにこちらに目を向けていた様子であった。


今、たしかに……目があった……。


脈がはやくなる。心臓の音がうるさくなる。


まさかわたしがふたりをつけていたなんてことは思わないだろうけど……偶然ここにいること、遥斗にどう思われるか怖かった。本当は偶然でもない。


「…え、あそこにいるの、笑の幼なじみじゃねえの?」


最後に気づいたのは竜だった。


「…っ」


言わないで。


「……笑…、……」


お願いだから、なにも言わないで…。


もう、今すぐここから逃げ出したい。朝、のんきにソファに寝っころがっていたあの瞬間からやり直したい。竜はそんなわたしの腕を引いた。


「行くぞ」って。