やっぱり。あれは遥斗だ。


ちゃんと見て、確信する。


どうしてここに遥斗が…?という疑問を持ったのと同時に、記憶のなかのとある女の子の言葉を思い出した。


『遥斗くん、日曜日は11時に集合ね!楽しみにしてるねっ!』


そうだ………今日、日曜日は──遥斗と百合ちゃんの、デートの日だ。


携帯で現在の時刻を確認すると、あと5分で、11時になる。……間違いない。


わたしはきっと──遥斗よりも、“彼女”の姿を先に見つけた。


3番ゲートの近くに、少しそわそわした様子で立っている、すごくおしゃれな格好をした女の子──百合ちゃん。


シフォン素材のワンピースに、上品なジャケットとヒールのパンプス。

暗めの茶色の長い髪の毛は、このあいだ見たときはひとつに横結びをしていたけれど、今日は下ろしていてゆるく巻いている。

化粧も、もともといい素材を上手く生かすようにナチュラルだけど綺麗にほどこされていた。


…………なんて、可愛いの。


わたしはある意味、絶望を感じた。


きっとだれもが目を奪われるだろう。


顔は小さくて、肩は華奢で、足は細くて長い…女のわたしからみてもすごくすごく魅力的だ。


それに引きかえ、わたしは………。

自分の履いてきたスニーカーに視線を落とした。


……わたしも、せめてパンプスを履いてくればよかった……。


そう考えてしまいながら顔をあげると、落ち合ったふたりはどこかに移動しはじめた。


当然だけどふたりの会話は聞こえない。


だけど、笑ってる。


ふたりで笑いあってる………。


遥斗がわたしに笑いかけてくれたのって、いったいいつが最後だっけ………?


遥斗の笑顔は、わたしが一番近くで見ていたはずなのに……。


「……ッ……」


こんな場面を見させるだなんて……神様は意地悪すぎるよ。


そう思うのなら、今すぐここから去ればいい。


それなのに……わたしはふたりの後を、つけてしまったのだ。