お父さんの昔からのお気に入りのケーキ屋は、わたしの家の最寄り駅から3駅行って、下りて歩いて5分のところにあるショッピングモールのなかにある。
近所にもケーキ屋はあるのに、お父さんがそこのショートケーキが一番好きだから毎年そこで買ってるんだ。
若干めんどくさいなと思いつつ、お父さんの誕生日なので、気持ちを切り替えてはりきって買いに行くことにした。
身なりを整えたわたしは、お母さんからケーキ代をもらい、スニーカーを履いて家をあとにした。
もうすぐで6月。
春の次は夏じゃない。梅雨だ。
熱い夏に向かう準備を梅雨がしているみたいだとわたしは思う。
こうして季節はわたしを置いてどんどんまわっていくのだろう。
置いてけぼりなんて嫌だ。
わたしも変化していかなきゃ。
そんな気持ちで駅までの道のりを、少しぬるい空気の中、走り抜けていった。