次の日優香に遠慮がちに「仲直りできた…?」と尋ねられ、わたしは「もういいの!」と笑顔を作った。

「いいってどういうこと…?」
「…遥斗、彼女できたみたいで…昨日偶然会ったの。わたしとは正反対の、すっごくお似合いの女の子…」
「え…っ」
「もう話しかけられなかった…」
「笑ちゃん…」
「遥斗とは、もうこのままでいい…。このまま慣れたほうが、楽なのかも…」
「ほんといいの…?」
「…うん」
「そっか……。笑ちゃんがそう言うなら……」


優香には心配をかけてしまった。

その上、すごく応援してくれたのに…ごめんね、優香。

これからは心配されないように遥斗のことは気にしないようにしなくちゃ。

胸の奥にしまっているこの気持ちも、急には難しいけれど、少しずつ小さくしていかないといけないよね──。


──
─────


「──笑!日曜日だからって、ダラダラしないの!」


ウィーンと掃除機をかける音よりも、お母さんの大きな怒り声がリビングに響く。


「ふああ~。お母さん?日曜日は、ダラダラするためにあるものだよ?」


ソファに寝っころがったわたしのあくびをしながらのこの言葉が、お母さんの沸点を超えさせてしまったようだ。


「あんたはほんと、口だけは一丁前なんだから!」


時は早いもので、今日は、5月の第4日曜日。


昨日は1年のとき仲がよかった友達と遊んだけれど、今日の予定は特にない。しいて言えば録画していたドラマを観るくらいだ。


「そうだ、お父さんの誕生日ケーキ、買ってきてくれない?どうせ暇でしょ?」


思い出したように頼んできたお母さん。

今日はお父さんの誕生日なのだ。

暇じゃないよ、ドラマ観るもん。

そう言えば掃除機で勢いよく吸いとられそうなので、わたしは「わかった~」と返事をしてソファからしぶしぶ立ち上がり、部屋着から普段着に着替えるべく自分の部屋へとゆっくり向かった。