冷たい幼なじみが好きなんです



「な、なんでわかるの!?」


誤魔化さず、自白してしまう。


はじめて誰かに、遥斗への気持ちを知られてしまった。

胸の奥底に、しまっていたこの気持ちを。


優香ってば、エスパー!?


「笑ちゃんの顔見てたら、そうなのかな…って」


優香の確信めいた口調に、ひやひやする。


「そ、そんなに顔に出てた?」


「うん」


恥ずかしい…そんなに“好き”が出ていたとは…。

隠していたつもりなんだけど…。


「笑ちゃんの話しからして、どう考えたっておかしいよね、その遥斗くんっていう人」


優香の口調が珍しく怒っているように聞こえる。


「いきなり嫌いって言ってくるなんて、なにか事情があるとしか思えない」


そういえば、竜もそんなことを言っていた。

だけど……遥斗の言い方からして、事情もなにも、ただずっと前から本当はわたしのことをうるさくてうっとうしいやつだと思っていて、我慢していたけどもう限界だったからついに言ってきた、としかとらえられない。


わたしがそう言うと、優香はますます怒りの表情を浮かべた。


「いくら幼なじみだからって、言って良いことと悪いことがある!それに、笑ちゃんはまったくうるさくないしうっとうしくもない!わたし、笑ちゃんの元気で明るいところ、大好きだもん!笑ちゃんの笑顔見てると、すごく癒される。2年になって、友達できるかなって不安だったけど、今、笑ちゃんがいるから学校楽しいもん!!」


「優香……」


そんなふうに思ってくれていたなんて。

あまりにうれしくて、胸の奥からなにか熱いものが込み上げてきた。


「とにかく納得いかないよ。……笑ちゃん、前みたいに遥斗くんと仲良くしたいんだよね?」


「………うん」


優香の質問に、わたしはこくんとうなづいた。


前みたいに一緒に登下校して下らない話で笑い合ったり、たまに家の愚痴を聞いてもらったり。そんな些細なことでいい。

遥斗を好きだと自覚してしまったけれど、幼なじみ以上になりたいなんて言わない。

ただ、幼なじみのままでいいから……また、わたしに笑いかけてほしい。あの透き通るような綺麗な声で“笑”って呼んでほしい……。最後に名前を呼ばれたのがいつだったか、まったく思い出せない。


遥斗。

遥斗。

わたしはいつだって遥斗の名前を呼べるよ。


遥斗はもう……わたしの名前なんて、呼びたくないのかな。