後ろから走ってきて俺の背中をポンと叩き、覗きこむようにして笑う顔も。
振り返り、俺が来るまで立ち止まったままニコニコとして待つ顔も。
俺は両方、好きだった。
体育祭の次の日の朝、俺と笑は…ふたり並んで坂道を歩いていた。
二ヶ月半ぶりに、ふたりで登校している。
たったそれだけのことなのに、俺はうれしくてたまらない。
ひとりでこの坂をのぼっているときはものすごく足が重たく長く感じていたのに、今はものすごく軽くあっという間に平らな道に。
今こうして隣に“彼女”になった笑がいることが未だに実感がわかなく、思わず笑のほうをじっと見た。
「…ん、遥斗?どうしたの?」
笑は不思議そうに俺を見上げ、きょとんとした瞳をする。
たまらなく愛しい気持ちが胸に込み上げてきて、笑の小さな手のひらをすくい、俺はこう言った。
「笑。──ずっと好きだったよ」
「…っ!」
笑は目を丸くさせて頬を赤らませた。
「あ、朝からなに………っ!」
「言いたくなったから」
「っ~…もう!心臓にわるい!」
笑はそう言いながらも、俺の手をぎゅっとにぎり返してくれた。
これからも、ずっとずっと好きだ。
一生大切にするから、俺の隣で笑ってほしい。
「ねえ、遥斗。夏休み、たくさん遊ぼうねっ!」
──その、俺が一番大好きなとびきりの笑顔で。
*end*