笑があの男を家に上げているのを見て、あの男が笑の頭を撫でているのを見て、俺は嫉妬で狂いそうになった。
家に上げるななんて、おかしいことを言ったのは自分のほうであることはわかっている。
俺にそんなこと言う筋合いはどこにもないことも、頭ではわかっているんだ。
だが、笑のことになると頭では整理がつかなくなる。
そんな器用なことができたら、俺はとっくに笑を忘れている。
──だれか、この気持ちを忘れる方法を教えてくれよ。
そう願うのに………笑は夢にまで出てくる。
夢の中で……笑とあの男がふたりで並んで俺の前を歩いている。
笑の視界には、俺のことなんてうつっていないかのように……。
「……行くな……そばにいろ……」
俺のそばにいてくれ。たのむから……。
すると笑は俺のほうへ向かってきて……俺の手をぎゅっと握りしめた。
俺の大好きな笑顔と一緒に。
……ああ。現実でも、簡単にこうなればいいのに。
──夢の中でしか、叶えられないなんて。



