俺ははやく笑を忘れるために、同じクラスの相田百合と付き合いはじめた。


百合はすごく俺のことを好きでいてくれていて、一緒にいると楽しかったし心が安らいだ。


だが……生まれてから今まで一緒に過ごしてきた笑のことを忘れるのは、果てしなく遠い道のりだった。


なんせ、家が隣のせいで偶然見かけてしまうことは何度もあったし、ひとりで登下校していると嫌でも笑のことを思い出してしまっていた。


「俺以外の男をこの家に入れるな」


自分勝手な独占欲で笑を困らせた。


笑を忘れなければならないのに、ストロベリームーンの日には我慢できずベランダに出てしまった。


そこには今年もちゃんと笑がいて、正直ホッとした。


だめだだめだと思いながらも、笑を俺の部屋に入れてベッドの上で抱き締めた。


この上ない安心感が心を包んだ。


当たり前だが身長も細さも感触も匂いも、すべてが百合とはちがった。


俺が好きなのは………。