………うそ、だろ。
笑に好きな男がいたなんて。
あの男はたしか、笑と同じクラスのよく話している……。
上手く息ができなくなった。
もう……俺だけの笑じゃ、なくなるのか。
“俺の笑”じゃ、なくなるのか。
これから、あの男の隣で笑う笑を見なければならないのか。
そんなの………ありえない。
俺は耐えられない。
それならいっそのこと………笑を嫌いになりたい。
でないと俺は……嫉妬と後悔の渦に飲み込まれて、抜け出せなくなってしまう。
「俺、お前のこと──」
──ずっと好きだった。
そう言えたら、どんなによかったか。
でも、笑はもう、あの男のもの。
俺は笑への気持ちを……忘れなければならない。
──ずっと嫌いだった。
正反対の言葉で、笑を遠ざけ、傷つけた。
今考えると、ほんとうに馬鹿なことをしたと思う。
だけどこのときの俺は……余裕なんて、一ミリもなかったんだ。