だが、笑は俺のことを幼なじみとしてしか見ていない。
それどころか、恋愛というものにさえ興味がないそうだ。
興味くらいもてよ、と思いつつ、他の男を好きになることがないという点では好都合だった。
だから俺も“興味がない”と伝え、笑が変に恋愛に興味を持たないようにした。
もし俺が恋愛として好きと伝えたら、笑はどう思うだろう。
驚くだろうか。
困るだろうか。
もしかしたら……受け入れて、くれるだろうか。
だけどもし、フラレたら……。
その先を考えると、簡単に気持ちを伝えることができなかった。
俺の特別は笑で、笑の特別は俺。
それが、幼なじみとしてだけだとしても。
今は今の関係のままでいい。
気まずくなるよりも、よっぽど。
──そんなふうに何年ものんきに過ごしていたから、他の男に取られちまったんだ。
ゴールデンウィーク前日、家の前で男が笑に告白している場面を目撃した。
俺は思わず塀の裏に隠れた。
「わたしも竜のこと好きだよ」
笑の口からその言葉が発せられた瞬間、目の前が真っ暗になり、まわりの音がなにも聞こえなくなった。
俺はすぐさまその場を去った。