「ふああ~っ!」
これでもかっていうくらい、吸い込まれそうなほど大きなあくび。
俺に見られていることに気づいてから、ハッとして「ちょ、見ないでよ!」と少しだけ恥ずかしそうにする。
「手くらい添えろよ」
「遥斗聞いて!!あくびってね、脳に酸素が足りてないから出るんだって!!だからね、中途半端なあくびをしたら、余計にあくびが増えると思うの!!」
「なんだその笑説」
だからって、そんな顔全体でするとか、こいつはほんとうに女子力というものがない。
茶色い髪の毛はいつもくしでといただけだし、化粧も他の女子と比べたらしてんのか?ていうくらい薄いし。
……まあ、なんもしなくても可愛いんだけどな。
可愛く見えちまうんだよな、俺の目には。
佐倉笑。俺の幼なじみ。
生まれたときからずっと一緒で、今までずっと一番近くでお互いの時間を過ごしてきた。
物心ついたときから……俺は笑のことが好きだ。
本気で恋愛として意識しはじめたのは、中学に入ってまわりの友達がちらほらと彼女ができはじめてからだ。
俺も笑を“彼女”にしたい。
幼なじみ以上の存在になりたい。