顔をあげると、グラウンドでどこかのクラスの体育が行われていた。男子のサッカーだ。女子は見当たらなく、きっと体育館であろうと思った。


去年同じクラスだった男子を見つけた。

ということは、同じ2年生だ。何組だろう。

そういえばあの男子は、去年クラスで一番頭がよかった気がする。

つまり………1組!?


その考えにたどり着いたと同時に、わたしの視界はたった一人の人物をとらえていた。


「………っ」


やっぱり1組──特進クラスだ。


遥斗の姿を見つけると………もう、ほかの男子は見えなくなる。遥斗しか、見えなくなる。


遥斗がサッカーしているところを、すごく久しぶりに見た。


小学生のとき昼休みにサッカーをするのが流行っていて、わたしもたまに男子にまじって参加していた。

懐かしいなあ…。


遥斗はあのときどちらかというと可愛い顔立ちをしていたはずなのに、今はもうしっかり男らしくかっこいい顔立ちになっている。


身長も男子の中では一番低かったのに、中3の一年間で15センチも伸びたんだ。伸びる前は少し見上げるだけでよかったのに、伸びてからは、わたしは遥斗の顔を見るためにはぐんと上を向かなければならなくて、それがすごく悔しかったんだよね。

遥斗は背が伸びて、どうしてわたしは伸びないの!わたしの身長、遥斗にとられた~!なんて騒いで。


……ああ、やっぱり、わたしの思い出にはいつだって遥斗がいる。


“思い出”。


……もう、思い出にしか、遥斗は現れないのかな。現れてくれないのかな。


これから先、遥斗と楽しい日々を築くことはできないのかな──


「──笑ちゃん、大丈夫?」


バケツを持ってやってきた優香が、心配そうにわたしの顔をのぞきこんだ。