こんなことなら、特進クラスに入らなければよかった。

二宮くんを好きになったことも告白したことも一ミリも後悔してないけれど、毎日顔を見ていたら、どうしても“好き”だと思ってしまう──。


──奇跡が起きたのは、フラレてから一ヶ月後のことだった。


日直で先生に雑用を頼まれ、教室に残っていた放課後のこと。


教室にはもうわたしひとりしかいなかった。


ひとりなのをいいことに………二宮くんの席に座った。


ここにある机とイスは大きさも形も色もすべて同じなのに………“二宮くんの席”になった瞬間に、特別なものになる。


はあ………。

やっぱり好きだ………。

オープンキャンパスのあの日から、ずっとずっと好きだもん。

一ヶ月やそこらで簡単に忘れられるわけがない………。


心のなかでそうつぶやいていたそのとき………

下校したはずの二宮くんが、教室に戻ってきたんだ。


ふたりきりになるのはあの日以来で………心臓が飛び出しそうになった。

しかも。

わたしは今、二宮くんの席にいる。

勢いよく飛び上がった。


「っあ、ご、ごめん……!!」


さいあくだ。

こんなところを、見られるなんて。

絶対引かれた………!!


二宮くんはこちらに近づいて………机のなかから、携帯を取り出した。

携帯電話を、忘れて帰ってしまっていたようだ。


二宮くんは吸い込まれそうな瞳でわたしのことを少しだけ見つめて、その綺麗な唇をゆっくりと開き、こう言った。


「……俺のこと、まだ好きなの?」